解説「社会参加」
枚数が多く、冗長な写真作品の解釈例
作品解説
社会参加
作者による作品解説
クロモリ

クロモニウム
写真アルバム「社会参加」の、解釈例を示すものです。
制作背景
クロモリさんが30歳を迎えるにあたり、その時頭にあった潜在意識のようなものを、写真アルバムの形で固定しておこうと思った。適当に撮りためたスナップ写真を取り上げて、自由律俳句を詠み、見出しをつけてそれらしくした。
気分はネガか?ポジか?
感情の起伏があまり感じられない写真が続くが、ネガティブ感情、ポジティブ感情は頻繁に入れ替わっている。その入れ替わりに堪えかねて、アルバムの最終見出しで自意識は人間をやめてしまう。
終わりが社会参加と関係なさすぎる?このページのキーワード解説を最後まで読んでみよう。
社会参加は十分か?
及び腰な態度が透けて見える。これでも昔よりは社会参加できていると思う。2016年に作成した写真アルバム「社会見学」では経験の乏しさからすました雰囲気を漂わせていた。
飲み込まれた「没作品」
アイディア出しと写真収集まで行って、作品(Web上の写真アルバム)にせず没にした組み写真を、このアルバムが飲み込んで組み写真の一部にしている。
窓を写した「開けゴマ」のキービジュアル、地上からの眺めを標準レンズの画角で集めた「地面の底から」の数枚が持ち込まれている。 それとは別に、怪しい色調に加工した写真をアルバム前半に置いている。
使用カメラ
すべてデジタルカメラ。写りの良いカメラで撮った写真を自然に選んだようだ。良く撮れるが本来RAWデータを記録できないIXY DIGITAL 25 ISでは、CHDKをセットアップして無理やりRAWデータを得ている。
EOSシリーズの一部カメラでは、Magic Lanternをセットアップし、Dual ISOモードで撮影、HDRのRAWデータから現像しているものがある。
現像は全てAdobe Lightroom Classic(Camera RAW)。
キーワード解説
アルバム内にちりばめたキーワードをいちいち拾って、背景の物事や行間を記述してみます。
- 社会参加
- 社会…世の中。参加…仲間に加わること。見学だけではなし得ないことをする。実際に手を突っ込み、動かす事。
- 出された食事は喜んで食べよう。~
- 協力して何かをするという姿勢が認められていれば、何かしらの配慮はしてもらえるものだ。食わず嫌いを減らすのは、後からでも間に合う。
- 何も知らない人間がひとり。
- 無知な私のこと。2018年、24歳、社会人1年生。新卒で入った会社はすでに辞めていて、第二新卒として地元の印刷屋に就職していた。
- おめでトリ
- スーパーファミコンのゲームソフト「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」内のセリフ。鏡餅のようなキャラクターが、ゲーム内時間の年始に発する。ちなみに、2018年の干支は戌(いぬ)。
- コロナ
- 1918~1919年のスペインかぜ、その後たびたび流行るインフルエンザに続く疫病。正式名称SARS-CoV2。COVID-19はWHOによる命名。パンデミックを引き起こし、社会に甚大な影響を与えた。
- 先輩方の経験値
- 私に足りないもの。
- アフターファイブ
- 和製英語。花の金曜日(昭和の流行語)、またはプレミアムフライデー(平成の流行語)の親戚。実際には、それに関係なく人生を歩んでいる人も大勢いるはずだ。
- 接続試行~リンクアップ、56Kbps
- ADSLのブロードバンドが普及する前は、アナログの電話回線を使ってインターネットにつなぐのが普通だった。56Kbpsという接続速度は、今となっては何も通信できないような速度だし、電話代は基本的に従量課金のため高額だった。
- ストリートビューの夢
- 都心でたまに見る建物内のストリートビュー。マウスのホイールを回して引きの画像を出すと、こんな風に歪む。この写真は夢のような着色も行われている。
- 後から色を染めて歴史の改ざん
- 同じような着色写真。
- 大晦日のブルーハワイ
- 季節外れな組み合わせ。
- 意地悪
- そういうことが好きでよくやる人はそのうち人相に現れてくる。
- マテンロー
- ただの言葉遊び。
- 三郷料金所
- 田舎人がここを通って南に降りるとき、都会を意識する。
田舎人がここを通って北に向かうとき、懐かしさがこみあげてくる。 - 終了終了!そんなこと忘れろ。まったく、陰気なやつだな~
- 引っ込み思案な新人だったので、心の中の私がたまにそんなことを言う。
- 開けゴマ
- アリ・ババが唱えた呪文。霊力(努力)が足りない人には扱えない。
- 没になった組み写真の名前。
- あまりに特性が異なると、会話は成り立たない
- だが、時には目標達成のために、そういう人とも協力して仕事をしなければならないことがある。同じ方向を向くための技術は仕事の分野によって異なるが、それを包む言葉の力は常に意識しておかなければならない。
- イコライザードンシャリ
- 窓のブラインドをそういう風に見立てている。
- トーチカがお前を見ている
- ロシア語。コンクリート製で、中に銃火器を装備した防御陣地。アーケードゲーム「スペースインベーダー」で、砲台を覆うように表示される公園のタイヤのようなものもトーチカ。
- この建物をもう少し引いて撮影すると、トマソン物件であることがよく分かる。
- ハトの交尾を監視する窓
- 公園のドバト(この写真に写っている、灰青のハト)を目で追いかけていると、片方が片方の上に乗っていることがある。それが交尾。ハトの交尾はすぐに終わる。
- コロナがやって来るワァ!ワァ!ワァ!
- この気恥ずかしい一文は、映画「A Hard Day's Night(1964年、ビートルズ映画。白黒)」の邦題「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」をもじったもの。
- 新型コロナウイルス感染症の話題にあふれるのは2020年末~2021年はじめあたり。デルタ株が流行っていたころは死亡率が高かった。
- ヴァージンには寂しいかもネ
- 英語virginは女性、男性の別なく使うらしい。ここではおじさん構文を意識している。
- 巨大なフダ、毒々しい色
- 東京では2回目の緊急事態宣言が出ていた。
- 働かせてください!
- 映画「千と千尋の神隠し」の、主人公千尋が湯婆婆に伝えたセリフ。このバス停置き場は撮影後割とすぐに消えてなくなった。
- 逃げる
- コロナさわぎから。田舎に来れば何とかなるのではないかという淡い期待。
- なぜか思い出にピン止めされるシーン
- そういう光景に出くわしたとき、とっさにカメラのシャッターを押すのはなかなか難しいことだ。
- 接続試行:2
- 接続試行とは、社会に出て自分を試すこと。その回数が増えていく。
- 打ち水程度のにわか雨
- 東京行きの車内から、にわか雨の降る様子を眺めていた。時速120kmで走る電車はにわか雨を振り切って、乾いた風景を再び車窓に写した。
- 進め!、止まって飲め!、進め!
- はじめは異なるキャプションをつけていたが、勢いで見てもらうように変更した。
- ひっくり返った「2」
- キャプションの角度をCSSで変更することで実現している。
- あなたのお気に入り、きっと見つかる
- ゲーム「スプラトゥーン2」のフレーバーテキスト「新しいジブン、きっと見つかる」の変形。
- 更地に咲く悪口の花
- 人のうわさ話をするときは、部屋を離れて、建物の端っこで。(実は別部屋の他人に聞かれている)
この写真を境に、数枚は感情がネガティブに振れる。 - 光(弱い)と闇(明るい)
- 没アルバム「地面の底から」からの一枚。
- 黄色い闇
- 自然光のスペクトルとは似ていない人工灯の怪しい発色が、地下世界を黄色く彩る。
- 二分間憎悪
- ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に出てくる行事。「某SNSでは日常的な営み。」は私が書き足した。
- ほんとかよ
- 「みっつのみつをさけましょう」への反語。
- この時期は緊急事態宣言が出ていたかどうか、もう忘れてしまった。
- 水も滴る良い男
- 「男」よりもラーメン屋の電光看板が目立ちすぎている。
- 逃げ去るイメージの、おとなしい版
- アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真集「決定的瞬間(別名:逃げ去るイメージ、または逃げ腰のイメージ、仏:Image à la Sauvette、英:The Decisive Moment)」の名前を借りた。勢いが弱まっているから「おとなしい版」。
- グリーン車
- ではありません。
- この写真集では、隔壁を意味している。
- ゼロ・インバウンド
- 訪日外国人が姿を消した珍しい秋葉原の光景。
- 常識はゆっくりと移り行く
- コロナが流行を過ぎると、暫定措置として行われていた施策は元に戻されていった。しかし、コロナを経験しなかったあの頃には、もう戻ることはないのだった。
- ガラス越しの社会参加
- 果たして自分は成長を実感できる経験を積み上げているのだろうか?迷いの渦中にいた。
ここから先の数枚は、特に深い意味のない即物的なキャプションのついた写真が並ぶ。 - いい加減旅慣れたかい?
- 自問自答の文句。
- アキバの穴
- Magic Lantern入りのEOSカメラでHDR撮影し、トーンを起こす現像をしている。普通に撮影するとノイズがたっぷり乗るか、外が白飛びする場面。
- そこにいるんだろう?
- 現代の土遁術。狭い都会にはこういうものが至る所にある。
- ARuKi SuMaHo
- 構えているのはコンパクトデジタルカメラ。
- Zzz…
- 24時間頑張るインフラの仕事だって、寝る時は寝る。
- 東京へ何を求める?
- ある程度地元で働くなり遊ぶなりして、ネタを仕込んでいかないと、なんでもある東京に行ったからといって、糧になる経験は決して得られない。
- たまには自転車ロングライドでもしたら?
- その方がコスパが良く、有意義な体験が得られるタイミングだってある。りんりんロードとかあるじゃないですか。
- ごみばっか撮ってないでさぁ
- でも都会には面白い被写体が色々ある。これは気の利いたキャプションがつけられず、こんな所に掲載された、ゴミのような写真。
- 理想論だけでは世の中成り立たない
- いろんな人間がひしめく場所には、不安定ながら機能している様々なシステムが色々ある。このホームは狭すぎるが機能はしている。広角レンズで距離感を演出する事で、何となく不安な画面にした。
- 休憩中の飲み屋街
- 昼間しか東京にいない私には、夕方~夜にかけての賑わいがまだ想像できない。
- 新旧ないまぜ住宅地
- 一気に作られた都会ではないという事。
- 匿名の集団 ~
- 色々な悩みをその辺の人に打ち明けるでもなく、自分の中に押し殺して、コンクリートジャングルを歩いているわけだ。
- 自分で選ぶなら、うまい飯にしたいものである
- 自己決定が自分の精神を豊かにしていく。
- インフラ 空気輸送の価値を問うてはいけない
- 保守費用の高い鉄道が動かせるなら、この国はまだ大丈夫。
- 日が暮れるより大事なもの
- 大人になったって、見る夢は子供時代の印象的な思い出のリメイクだったりする。
- 祝福のトンネル~
- 潜るのが怖いか?真実の口に手を入れるのが怖いか?
- インターミッション
- 休憩なしに走っていたら、直るものも直らなくなる。仕事も遊びもそう。
- 栃木名物のおいしいやつ
- 緑、黄色の楽しげな配色が目を引く、定番のお土産。
- 平凡は感謝すべき事
- 通り道沿いにある地蔵。一時期出退勤のたびに車からその姿を見ていた。たまには手を合わせに行こうと思い、自転車で会いに行った。
- 見送る
- 私はもう学生ではなくなってしまった。
- 接続試行:?
- 大都会東京を自分の考えで泳ぐ。
- 携帯電話の収容数を考えると恐ろしくなる ~
- 移動体通信への欲望がこれを可能にした。
- 広角マテンロー
- 渋谷です。
- 子供の世界、大人の世界、傍観者の世界
- 帰りの電車をこのホームで待つようになったのは、2015年に上野東京ラインが開通してから。
- うまいもの食って寝る!それじゃダメなのか?
- 人間は暇に耐えられない生き物なので、食う寝るを満足すると必ず何かやらかす。
お前には理解できないだろうよ。 - 本音と建前
- 高速道路をただ50km/hの制限通りに走ったら、まず追突される。今50km/hの速度で走るべきかどうかは、ちゃんと周りを見て判断する事。
- 虫歯
- 建て直し。
- あなたのくらしにちょうどいい
- ヤマダ電機のキャッチコピー(をひらがなにしたもの)。その英語版は、英語人には意味の分からない単語の並びとして映る事で有名だったらしい。
- ジオラマ観察
- 本城直季のあおり撮影を真似たわけではなく、流し撮りで似たような効果を得ている。
- セーブポイント
- ゲームにおけるセーブポイントは、画面内のどこにあっても見分けがつくよう、特徴的な造形を与えられていることが多い。
- 小さな駐車場と、さらに小さな神域
- なぜかこういうものを愛おしく感じ、そして写真に残してしまう。
- 花火が夏祭りを知らせる
- 花火の音は良く聞こえるものの、打ちあがる方向は向いている窓とは反対方向だった。車窓から花火を撮ることはできなかった。
- この時期は職なし生活をしていて、お金を使う遊びは厳選しないと危険だった。パソコンの電源がまた壊れて、買い直しを迫られたのは痛かった。
- 見物
- ぶれていて分かりにくいが、照明のついた窓から住人が花火を見物しているのが良く見えた。様々なマンションから同じような見物人の影が踊り、それは4駅分ほど続いた。
- イタリアンレストラン
- 行ったことは無い。
- その希望は虚栄心か
- 覚悟は決まっても、くよくよしてしまう。迷いが不安を呼ぶ。
- ままならぬ我慢なのか?
- ロケ地は上野駅の上野東京ライン・常磐線。
- 適応の迷走
- 危機感や挑戦心があれば人は変われる!だが私は魔法の使い方を少々間違ってしまったようだ。
- 私はカエルになってしまった
- 歌を歌ってみようか。「ゲッゲッゲッゲッゲッ…」
- ゲコーッ、ゲコゲコ
- 精神の高揚を現している。
- ゲコゲコ
- バスに乗って旅をするカエル。
- 少しは話せるようになったじゃないか
- 間違った魔法のおかげで、予想しなかった生き物と意思疎通できた。意外な収穫だった…が、食われてしまいそうでかなり怖い。
解説はこれで終了です。