地球儀

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地球儀

それはこんな風にきわめて感傷的に書きだした。――『祖父は泉水の隅の灯籠に灯を入れてくるとふたたび自分独りの黒く塗った膳の前に胡坐をかいて独酌を続けた。同じ部屋の丸い窓の下で、虫の穴がところどころにあいている机に向って彼は母からナショナル読本を習っていた。 「シイゼエボオイ・エンドゼエガアル」と。母は静かに朗読した。竹筒の置ランプが母の横顔を赤く照らした。

「スピンアトップ・スピンアトップ・スピンスピンスピン――回れよ独楽よ、回れよ回れ」と彼の母は続けた。

「勉強がすんだらこっちへ来ないか、だいぶ暗くなった」と祖父が言った。母はランプを祖父の膳の傍に運んだ。彼は縁側へ出て汽車を走らせていた。 「純一や、御部屋へ行って地球玉を持ってきてくれないか」と祖父が言った。

牧野信一『地球儀』

2013年に大学入試センター試験を受けた学生に伝わる伝説の現代文。それに出題されたのが牧野信一の短編小説『地球儀』だった。

一発勝負の試験にさっそうと現れては多くの受験生に謎と苦痛を与え、涙を流す者も居たという。

うごくメモ帳はDSi版、3DS版共に内蔵カメラを使って静止画の取り込みができる。被写体片手にストップモーションアニメが作れるぞ。